昨日は超真面目なBLOGを配信しました。根が真面目なのか(笑)「教育」に対する持論を書くと、まず長くなる、そして説得するような文章になってしまいます。ちょっと反省!
しかし、OECDの「PISA 2018」の結果を知ることはとても大切だし、2000年から継続調査されている変遷データを眺め、自分なりに解釈し、教育の現場では、あるいは子どもたちには何が起こっているのかを推測することは次の一手のためには必要です。
あなたは、どのような「解釈」し、「推測」することができましたか?
この件については、今後何度も出てくると思うので、覚えていてください。
さて、今日は『「学力」の経済学』からいくつか抜き出して教育における経済学について一緒に考えてみましょう。
(1)「子どもは褒めて育てるべき」なのか?
これは、『まんがでわかる「学力」の経済学』で、小学校3年生の娘の将来について悩む母親へ教育経済学者が独自の教育法を伝える内容のマンガの一節です。『「学力」の経済学』をわかりやすいストーリーまんがの形式に落とし込み、内容を凝縮したものになっています。
『「学力」の経済学』には、特定の個人の成功体験ではなく、教育経済学の研究者が、科学的な方法を用いて、大規模なデータを分析した結果から導きだした「効果的な教育法」をまとめてあります。
前出のマンガは以下のようにつづいています。
結局、母親は娘の「将来」を心配している、勉強するのはあなたの将来のためなのよと言い出していますが、子どもさんがいらっしゃるあなたは、そのような経験があるのではないですか?
実際、著者の中室氏は「漫画で見たような光景を繰り広げている家庭は少なくない」と言っています。そして、子育て中の友人たちから受ける相談で多い「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないのか?」「子どもは褒めて育てるべきなのか?」の2点についてデータを用いながら解説していきます。
「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないのか」
これは、子育て中の人たちと話をしていると、必ず出てくるフレーズですね。そして、その回答はと言うと、「いいと思うよ」というポジティブな意見を寄せる友人や、「いやいや、ダメでしょ」というネガティブな意見をする友人に分かれます。
前者は「にんじんをぶら下げれば勉強するんだったらそれでいいじゃないか」という考え方で、教育、特に子どもの学習(成果)への対応にはあまり悩んでいません。
後者は「褒美で子どもを釣らなければ勉強させられないなんて、親として失格なのではないか」と、子どもの教育についてある意味真剣に悩んでおられることが多いようです。
もちろん、中立的な立場の僕コージーニは、これらの意見をくれる友人たちにそれぞれ以下のようなことを聞いてみます。
「どうして、そう考えるのか?具体的に教えてくれるかな?」
すると、以外に同じような回答が来たりしてちょっとビックリします。
「そのように自分が教育されてきた」
「ご褒美に向かった勉強で入試に合格できた」
読まれているあなたは気づかれたと思いますが、これらの回答に共通しているのは「経験」です。自分がこれまでしてきた勉強に関して「良い」と考えていることには積極的に取り入れる傾向にある様子です。しかし、自分の行為(ここでは、ご褒美で釣る)を「悪い」ことと認識した瞬間からはその行為は否定的になるかも知れません。
このように、経験則で学習や学習成果について語る人がとても多いことに気づきます。
このことを西内啓氏は著書『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)で、以下のように書いています。
「不思議なもので、教育という分野に関しては、まったくと言っていいほどの素人でも自分の意見を述べたがるという現象がしばしばおこる」
わ~これは言い当ててますよね!同じようなことをコージーニもどこかで言っていましたが、もちろん西内先生のことばだからとても重たく、重たいけどすんなり心に響くよね!
この本でも、そのような人たちのことを「1億総評論家」と呼んでいましたよね!
前のBLOGにも書いたけど、西内氏のことばは以下のようにつづきます。
「どのような教育がいいか、という問いへの回答は、教育される本人の特性や能力、環境などさまざまな要因によって左右される…(中略)自分が病気になったときに、まず長生きしている老人に長寿の秘訣を聞きに行く人はいないのに、子どもの成績に悩む親が、子どもを全員東大に入れた老婆の体験記を買う、という現象が起こるのは奇妙な事態だとは思わないのだろうか」
これはやはり教育の危うさを的確に捉えていて、ちょっと怖いですね…子どもがいる人なら、子どもの教育のためなら藁をもすがる気持ちで「個人の体験記」なるものに手を出してしまうのでしょうね…
日本では、義務教育と地域社会のおかげで、教育を受けたことがない人はほぼいません。だから、ほとんどの日本人は教育を経験しているし、良くも悪くも「教育」について一家言あるという人は少なくありません。子どもを持った…特に、受験生の親であれば…どこでも入学試験に話になるのでは…そして数多くの体験談やエピソードがあふれる中、多くの人は、「子どもを全員東大に入れた」などの、極めて特殊な成功体験に魅了されてしまいます。
ちなみに、アメリカは公教育が崩壊していると言われて久しいですよね…スゴイ国ではありますが、全体に見る教育水準はまだまだ低い様子です。日本は恵まれているのかな?
(2)経済学における「教育の収益率」という概念
これは、「子どもが1年間追加で教育を受けたことによって、その子の将来の収入がどれくらい高くなるか」を数字で表したものです。そして、教育の収益率は、株や債券などの金融資産への投資などと比べても高いことが、多くの研究で示されています。
つまり、今しっかり勉強すれば、将来の収入が高くなることが数字で示されています。
これは、ヘックマン教授による「人的資本投資の収益率」という概念です。ライフステージの中で、「幼児教育がもっとも収益率が良い」と言うことを表しています。
souce:University of Chicago
つまり、とにかく小さいころに教育を行った方が良い。ということだ。
これは、幼児教育を受けると、単純にIQが高くなった、というだけでなく、その後の人生において、学歴の高さ、安定した雇用、借金・犯罪の発生率に繋がるのだそうです。
なぜ子どもたちは、目の前にご褒美がなければちゃんと勉強しないのか?
実は、人間には目先の利益が大きく見えてしまうという性質があり、それゆえに、遠い将来のことなら冷静に考えて賢い選択ができても、近い将来のことだと、たとえ小さくともすぐに得られる満足を大切にしてしまうのです。このことは「双曲割引」といいます。
例えば、半年後に5000円のお年玉がもらえると分かっている子どもがいます。その子に「1週間もらうのを遅らせるとお年玉は5500円になるよ」と伝えると、子どもはどのように応えるでしょう?「だったら、1週間我慢して5500円もらう」となりますよね!
一方、明日が誕生日で5000円のお小遣いがもらえる子どもがいます。その子に「1週間先延ばしにすると5500円にするよ」と言われた場合、どう応えるでしょう?「早くもらいたいから明日がいい」と、すぐに得られる満足を優先してしまいます。
このことを利用して学習に組み込んだものが「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないのか」の回答になります。
つまり、近い将来の満足を優先する状態は、子どもが勉強するときにも生じているということです。遠い将来のことを考えればちゃんと勉強したほうがよいことがわかっているのに、つい勉強せずに楽をするという近い将来の満足を優先し、その結果「勉強するのは明日からでいいや」と先送りしてしまうのです。
だから、あなたはこのことを逆に利用するべきなのです。子どもを今勉強するように仕向け、勉強を先送りさせないための大いなる戦略なのです。
これらのことを理解した上で、あなたは今日から「目の前ご褒美大作戦」を決行することになりますが、ご褒美を与える際にはその設計が大切になります。正しく行えば、「勉強するのが楽しい」「今やることが大切」などの気持ちを持たせることができ、子どもたちの学力を向上させることができますよ☆彡
今日も最後まで読んでいただき、どうも有り難うございました。
あなたにとって有益な情報であればますます嬉しいです。
明日もこの続きを書きますので、よろしくお願いします。
それでは、また!Ciao☆彡
【引用・参考書籍】
・中室牧子著『「学力」の経済学』ディスカバー21
・西内啓著『統計学が最強の学問である』