【教育】学習成果の教育経済学③-インプット・アウトプットアプローチ「フライヤー」教授

昨日はヘックマン教授による「人的資本投資の収益率」という概念から、「目の前ご褒美大作戦」、いわゆる「目の前のニンジン作戦」を決行することになりますが、これはヘックマンの性質を逆に利用し、子どもを今勉強するように仕向け、勉強することを先送りさせない戦略でした。

今日は、「ご褒美」についての大規模実験の内容と結果についてお話しします。

・「テストでよい点を取ればご褒美」
 ・「本を読んだらご褒美」

このどちらが効果的か?という実験です。
アメリカ、ハーバード大学ローランド・フライヤー教授は、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ニューヨーク、ワシントンDCの5都市で、ご褒美の因果効果を明らかにする実験を行いました。

フライヤー教授の実験には、大きく分けると2つのタイプがありました。一つは「学力テストや通知表の成績がよくなったら報奨金を出す」というもの。つまり「いい成績」というアウトプット(成果・結果)に対して報酬を出したのです。

その一方、「本を読む、宿題を出す、きちんと出席する、制服を着る」といったインプット(投入・行動)に対して報酬を与えるという実験も行いました。

ちなみに、米国では、大人を対象に禁煙や運動を習慣化させる目的でさまざまな実験が行われ、インセンティブが習慣形成に一定の効果を上げることがわかってきています。

そして、子供の学力がインセンティブによってどう影響されるかを調べる実験も行われ、約3万6000人もの児童・生徒が参加したものが、フライヤー教授の大規模実験になります。

【BOX】教育生産関数
フライヤー教授の研究を理解するためには、子どもの教育成果の分析に用いるもっとも標準的な分析枠組みである「教育生産関数」を知っておくと便利です。これは、別名「インプット・アウトプットアプローチ」と呼ばれ、授業時間や宿題などの教育上のインプットが、学力などのアウトプットにどのくらい影響しているかを明らかにしようとするものです。

インプットにご褒美を与えると、本を読んだり宿題をしたりするようにはなるかも知れないですが、必ずしも成績がよくなるとは限りません。
一方、アウトプットにご褒美を与えることは、より直接的に生成をよくすることを目標とするため、アウトプットにご褒美を与える方がうまくいきそうな気がしますよね!
と言うことを踏まえ、フライヤー教授が実施した実験をながめてみましょう!

ひとつは、ニューヨークやシカゴで行われたもので、教育生産関数でいう「アウトプット」、すなわち学力テストや通知表の成績をよくすることに対してご褒美を与えるものです。「テストでよい点を取ればご褒美をあげます」はこちらになります。

もうひとつは、ダラス、ヒューストン、ワシントンDCで行われたもので、教育生産関数における「インプット」、すなわち本を読む、宿題を終える、学校に出席する、制服を着るなどに対してご褒美を与えるものです。「本を1冊読んだらご褒美をあげる」はこちらに該当します。

しかし、結果は逆に出ました!

学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちでした。子供の学力を上げるためには、インプットにインセンティブを与えることが有効だということがわかりました。

親はつい「今度のテストで80点以上取ったら、(遠い将来である)誕生日にお小遣いをあげるよ」という約束をしてしまいがちです。しかしフライヤー教授の実験結果に基づけば、それよりも「1時間勉強したら、(近い将来である)すぐにお小遣いをあげるよ」としたほうが効果的であることが示されています。

しかし、果たしてこれでOKなのでしょうか?子どもたちは「勉強の仕方を変える」や「授業をしっかり聞く」などの本質的に学力の改善に結びつく方法までは及んでいなかったのかも知れませんよね…

このことを解決した研究があります。それが、ニューヨーク市立大学のロドリゲス准教授の研究です。准教授は、子どもの学習の面倒を見る人・指導する人や先輩がいる場合には、アウトプットにご褒美を与えても学力が改善することを発見しました。

これは、指導者や先輩が、目標達成のためにどのように努力するべきかについて具体的に道筋を示してくれたら学力を向上させることの証拠になりました。

今日も最後まで読んでいただき、どうも有り難うございました。
今日は以下のことが理解できたのではないかと思います。

 ・子どもたちは目先の利益を優先してしまう。
 ・ご褒美は「本を読む」「宿題をする」「出席する」などのインプットがよい
 ・アウトプットでは指導者などのっ導いてくれる人が必要

この情報があなたにとって有益な情報であれば嬉しいです。
それでは、また!Ciao☆彡

【引用・参考書籍】
・中室牧子著『「学力」の経済学』ディスカバー21
・西内啓著『統計学が最強の学問である

投稿者: コージーニ先生

リハビリテーションセラピストです。現在までに約15万人の患者、その家族及び学生と保護者とかかわりを持ってきました。その経験から患者とその家族&子どもたちと学生たちとの人生に寄り添って感じたこと、学んだことの中から「過去の僕」に知っておいてほしいコト&「未来のみんな」に伝えたいことを呟きます。 著作や詳しい活動履歴はこちら→ https://kojini'sblog.com/about

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