【教育】学習成果の教育経済学④-『子どもをほめて育てる』ために!

昨日のBLOGでは、フライヤー教授の研究を理解するためには、子どもの教育成果の分析に用いるもっとも標準的な分析枠組みである「教育生産関数」について解説しました。
これは、別名「インプット・アウトプットアプローチ」と呼ばれ、授業時間や宿題などの教育上のインプットが、学力などのアウトプットにどのくらい影響しているかを明らかにしようとするものでしたよね!

プラスして、アウトプットでは指導者などの導いてくれる人がいれば成果が出せることもわかりました。

「テストでよい点を取ればご褒美」や「本を読んだらご褒美」に関しては、それぞれその使い分けが大切だということになります。

そこで、今日はご褒美の次の段階として、「ほめ方」についての研究成果を見てみましょう。

子どもは褒めて育てるべきなのか?

という親からの質問や相談は子どもたちを育てる期間の最大の悩みかも知れません。
最近では、小学校や中学校の教員からも同じような声が聞かれます。

あなたは「ほめ育て」ということばをご存じですか?

これはほめることで、子どもたちの自尊心を高める方法であり、多くの人に支持されています。多くの育児書にも「子どもはほめて育てると自信を持ち、さまざまなことにチャレンジする」ということが書いてあります。

自分に自信を持つこと=自尊心を高めることです。心理学の世界では、自尊心が高い生徒は、教員との関係が良好で、学習意欲が高く、実力に見合った進路を選択している傾向が報告されています。

逆に自尊心が低いと、教員との関係がうまく築けなかったり、学習への意欲もなかったり、自分の実力さえも過小評価してしまいます。結果、進路の選択が真の実力には見合わない選択になっています。

【BOX】ローゼンバーグ自尊心感情尺度
自尊心を計測する有名な指標で、『Society and Adolescent Self-Image(青年の自己像と社会)』の著者である心理学者のモーリス・ローゼンバーグ教授によって提案されたもの。
・good enough(今の自分を受け入れて、そのままに認める感情)
 ・very good(他人との被殻で、自分の良い点を認める感情)

自尊感情の測定尺度の開発には、以下のような歴史がある。

ローゼンバーグ(1987)のいう「very good」な自尊感情は、自分が一番という他者との比較の中で自分を肯定的にとらえようとする感情であり、そこには他者とつながろうとする
ベクトルは見えてこない。そこでは優越性という感覚と切り離すことができず、形成される力は「○○と比較して自分は優れている」という、他者や社会的な基準を内在化したものとなる。そして肯定的な評価を受けられないと、自分の優越性を感じること ができないがために、ますます他者や社会的な基準を内在化してしまうと考えられる。このように他者や社会的な基準を内在化していくことで形成される自尊感情では、自分や社会の中のマイナス面や矛盾に目が向かず、それらを変革しようとする指向性は働 かないのではないだろうか。

自尊感情には以下の4つのタイプがあります。

・SBタイプ:自尊感情の2つの部分がバランスよく形成されている
・sBタイプ:社会的自尊感情が育っていない(のんびり屋・マイペース)
・sbタイプ:自尊感情の2つの部分が両方とも育っていない(孤独・自信がない)
・Sbタイプ:社会的自尊感情が肥大化している(頑張り屋の良い子・不安を抱えている)

ここまでは、自尊感情について解説しました。話をもとの「ほめ方」に戻します。

子供の勉強を習慣化させようと考える親にとって、「やってはいけないこと」がいくつかあります。一つはテストの点がよかったときに「能力をほめる」ということです。

米コロンビア大学のミューラー教授らが公立小学校の児童に対して行った実験によると、IQテストのあとで「努力」をほめられた児童は、その後に行われたIQテストでさらに成績を伸ばしましたが、「能力」をほめられた児童は、逆に成績を落としてしまったのです。

能力をほめられた子どもは、テストの結果を「自分の能力のおかげである」と考えるようになり、次のテストでは「できる」と過信してよい点を取るための努力をしなかったからだと考えられます。

また、子供に「勉強しなさい」と言うことも逆効果です。このことは学習院大学の乾友彦教授らと行った研究で明らかになりました。

就学期の児童を対象に「子供の学習時間を延ばすために、親はどのような働きかけをしたらいいか」を調査したのですが、残念ながら「勉強するように言っている」だけでは著しく効果が低く、とりわけ母親が女の子に対してそんな働きかけをすると、子供の学習時間は反対に短くなってしまうことがわかりました(下図「母のかかわり」参照)。

一方、最も効果的だったのは、母親の場合は「勉強する時間を決めて守らせている」こと、父親の場合は「勉強を見ている」ことでした。

経験的によく目の届く範囲で勉強させている様子を目にしますが、これは「リビングで勉強する子は成績がいい」ということを暗黙のうちに知っているからでしょうか?子どもは勉強する姿を親が近くで見守っている方が、より積極的に勉強時間を管理できるからではないかと思われます。

アメリカ個人主義の産物である「個室」は、親の目は届かないし、会話もなく、かなり自制できる子どもでないと成績向上につながるような学習はできないと考えていいでしょう。
特に、最近は手の届く範囲に「スマホ」があると学習の妨げになっているとする研究も発表されています。「個室」や「ひとり」で勉強するには誘惑が多くて大変ですね。

それよりも、身近なリビングであるいはダイニングで時々簡単な確認程度の会話もはさめるスペースでの学習は、効率もあがるし、何より他者から守られている感覚があっていいのではないかと考えます。

コージーニが見ている学生たちにも、このような研究や実験結果を伝えています。トップ10に入る学生の多くは、既にこれまでこのような環境でやっているということをよく耳にしています。

やはり、小さいころからの環境設定や親のかかわりは大事ですね!

今日も最後まで読んでいただき、どうも有り難うございました。
今日は「ほめて育てる」という話を展開しましたが、いかがだったでしょうか?
これからも、あなたにとって有益な内容をお伝えできればと考えています。
それでは、また!Ciao☆彡

【引用・参考書籍】
・中室牧子著『「学力」の経済学』ディスカバー21
・西内啓著『統計学が最強の学問である
・Morris Rosenberg (著)『Society and the Adolescent Self-Image』1965

投稿者: コージーニ先生

リハビリテーションセラピストです。現在までに約15万人の患者、その家族及び学生と保護者とかかわりを持ってきました。その経験から患者とその家族&子どもたちと学生たちとの人生に寄り添って感じたこと、学んだことの中から「過去の僕」に知っておいてほしいコト&「未来のみんな」に伝えたいことを呟きます。 著作や詳しい活動履歴はこちら→ https://kojini'sblog.com/about

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