【教育】学習成果の教育経済学⑥-学習時間には親の関与が大事!

子どもを持つ親であるならば、この問いには強い関心を持つのではないだろうか?つまり、テレビやゲームに費やす時間と勉強時間の間には、どのような関係性が成立するのかと言う話である。あなたは、どのような実験研究結果を想像しますか?

中室氏によると、以下のように述べています。

“このような問題は学童期の子どもをもつ親だけでなく、政府・自治体、授業時間を策定する各学区にとっても、経済的、文化的、社会的資本の家庭格差が拡大している現状において、重要な意味を持つものと考えられる。”

授業を考える学区や家庭がこの研究に注目していることは想定内であるが、政府や自治体までもが注目している研究だとは…その内容を確認する前に、以下の問題を考えておこう。

学習時間の長さと学力の高さとの関係はどうなのか?

ということです。これならあなたも何となく想像がつくのではないのかな?
普通に考えれば、頑張れば(勉強時間が長い)、成績は上がる(学力は高まる)というふうに想像するのでは…まあ、要領が悪い人は、時間ばかり掛かって成績はイマイチかも知れませんが…残念!

そして、もうひとつ確認しておきたいのが、実際に子どもがテレビやスマホを扱う時間!

いろんな報告があるので、いくつか列挙しておきますね!
これは「親のスマホ利用時間と子どもの利用時間の関係」の記事!



これは、ちょっとビックリな「未就学児童のスマートフォン利用時間に関する調査」結果!
3歳以上の約半数の幼児がスマートフォンを月に2、3回以上利用しているという結果になりました。また毎日利用する割合は、年を重ねるごとに増加している傾向にあります。
僕らが考えている以上に、スマホなどのスマートデバイスは、小さいころからの必須アイテムになってますね!そう考えると、スマホを持っている、いないとかの問題よりも、どのように上手に利用するかを考えた方がよさそうですね☆彡




こちらは、スマホ利用に関するの親と子の関係!親の利用時間が多い家庭では、子どもの利用時間も増えるという結果が出ています!

「親が使えば、子どもも使う」

そんな結果になってますが…最近は舵や育児の合間にSNSやゲームに興じる親が多くなっているのは事実だし、現在の僕の学生たちが親になるときには、その傾向がもっと大きくなるだろうということは誰が考えてもそう思えるはずです。今の子どもたちは、スマホがなければ、ゲームがなければ生きていけないくらいの勢いで時間も忘れてゲームに興じていますよね…僕からすれば信じられない!I can’t believe it✖

もうひとつ、「何のためにスマホを利用させるのか?」という問いへの回答も興味深い!


グラフを見てもらえると「子どもを静かにさせるため」といった理由で子どもにスマホを利用させる家庭は多いようです。この調査では70%の親が子どもを静かにさせるためにスマホを利用した経験があるという結果になりました。なお、子どもに人気のスマートフォンコンテンツは圧倒的に動画が1位だそうです。

ちょっと脱線しましたが、このような結果を踏まえて、今日の命題「子どもからテレビやゲームを取り上げれば、勉強時間は増加するのか?」を紐解いてみましょう!

中室氏によると、学習時間の長さと学力の高さとの関係であるが、親と子どもに関する観察不可能な属性(子どもに対する親の教育熱心さや子ども自身の学習意欲など)を考慮する必要があるため、学習時間と学力の因果関係を証明することは容易ではない。しかし、最近の教育経済学研究では、勉強時間が長いほど学力も高いことが明らかになっている。これらの研究では、親と子供に関する観察不可能な属性をコントロールしたうえで、学習時間によって測定された子どもの「努力」と学力の因果関係についても明確なエビデンスが示されている(Stinebrickner and Stinebrickner 2008、篠ケ谷・赤林 2011、Kawaguchi 2013)。

近年、学習時間が学力に対して因果的な効果を持つことが、複数の研究で明らかになってきました。最も興味深いのが米国のトッド・スティンブリッカーとラルフ・スティンブリッカーによる研究”The Causal Effect of Studying on Academic Performance“です。

米国の大学の学生寮では一般に、複数の学生が同じ部屋に入居します。どの部屋に誰が入居するかは抽選で決まるのですが、同研究ではルームメイトになった学生がゲーム機を持っているかどうかを調べました。そして、①ルームメイトがゲーム機を持っていた→その影響を受け、学習時間が減った②ルームメイトがゲーム機を持っていなかった→その影響を受けず、学習時間が減らなかった――という2つのグループの学生の成績を比較しました。すると、明らかに②のグループの学生の成績が良かったのです。この自然実験によって、「学習時間が短くなる→学力に影響が出る」という因果関係が明らかになりました。



テレビやゲームの時間が子どもによって異なるのは、親がテレビをみたりゲームをするのを許容する時間の差かもしれないし、あるいは子ども自身の学習意欲の差の表れかもしれない。親と子どもに関するこのような観察不可能な属性は、子どもの学習時間とテレビやゲームの時間の両方と相関している可能性がある。この内生性の問題に対応するため、本研究では複数の手法を用いて、小学校低学年の児童では、テレビやゲームの時間と勉強時間の負の因果関係を示すロバストな結果を得た。

テレビやゲームの時間が子どもの勉強時間を減らす影響は非常に小さい

しかしながら、その効果は無視できるほどに小さい。テレビやゲームの時間が1時間増えても、男子でわずか1.86分、女子で2.70分の勉強時間を減らすに過ぎない。絶対値で見るとゲームはテレビより影響が大きいが、米国における十代の若者のデータから得られた推定値と比較してその効果は小さい。親と子どもの観察不可能な属性をコントロールすると、家族構成や親の働き方は子どもの学習時間には影響せず、子どもの活動を責任持って見守り、世話をする大人の存在と、親が家にいる時間の長さは、子どもの学習時間にも、学習態度や意欲にも大きな影響はないことを示唆している。

テレビ・ゲームの制限より親の関与が重要

それでは、学習時間に影響する要因は、何なのでしょうか?

中室氏によれば、それは「親の関与」です。一昨日のBLOGで使用した図ですが、これは親の関与の仕方と子供の学習時間の関係を示しています。



関与の仕方は、
①勉強をしたか確認している
②勉強を見ている
③勉強する時間を決めて守らせている
④勉強するように言っている

の4通りです。

母親の関与で最も効果が大きかったのは「勉強する時間を決めて守らせている」でした。一方、「勉強するように言っている」は女の子に対してはマイナスです。つまり母親が同性の子供に「勉強しなさい」と言うと、逆効果なのです。

父親の関与で最も効果が大きかったのは「勉強を見ている」でした。

総括すれば、子供の横について勉強を見てやるか、勉強時間を決めて守らせるかのいずれかでなければ、子供の学習時間は延びません。父親と母親では、関与の効果に差がありますが、父親の役割がかなり重要であることが明らかになりました

と言うことで、今日の命題「子どもからテレビやゲームを取り上げれば、勉強時間は増加するのか?」の結論はNO!ということになります。

残念ながら、静かにしておかせるために与えたスマホの使用時間が長くなると、逆に取り上げてしまう親にこそ問題がありそうですね!
また、母親か、父親のかかわり方は、子どもの学習成果を上げる、成績を上がるには大いに利用すべき「資源」なのではないでしょうか!
特に、母親は「決めた時間を守らせる」、父親は「(近くで)勉強を見ている」というある意味簡単なことで子どもたちの未来が明るくなるのであれば、今日これからすぐにでも応用していきたいものです!

僕はこれからも学生たちの傍らで、彼ら、彼女らのことを信頼し、やっていることをやさしく見守る授業をし続けようと思いました。
あなたは、これらの情報をどのように活かしますか?


今日も最後まで読んでいただき、どうも有り難うございました。
これらの情報があなたにとって有益な情報であれば嬉しいです。
それでは、また!Ciao☆彡

【引用・参考書籍】
・中室牧子著『「学力」の経済学』ディスカバー21
・西内啓著『統計学が最強の学問である
・Ralph & Todd R. StineBrickner (2008). “The Causal Effect of Studying on Academic Performance”.

投稿者: コージーニ先生

リハビリテーションセラピストです。現在までに約15万人の患者、その家族及び学生と保護者とかかわりを持ってきました。その経験から患者とその家族&子どもたちと学生たちとの人生に寄り添って感じたこと、学んだことの中から「過去の僕」に知っておいてほしいコト&「未来のみんな」に伝えたいことを呟きます。 著作や詳しい活動履歴はこちら→ https://kojini'sblog.com/about

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