【脳科学】配偶者の物理的存在は、夫婦間での脳の同調性を高める!

男女は(最近はそれだけではありませんが…ここではこのように規定して話しをします)、結婚し夫婦となり、そして子どもを授かる(もちろん子どもがいない夫婦もいますが、ここでは子どもができるを一般化して話します)。そこから、夫婦での子育てがスタートするという典型的な経過をたどる方たちが圧倒的に多いのではないかと思います。

そこで今日の研究です。
昨日は「子どもの将来は「幼少時の会話」で決まる!」とタイトルし、MITのジョン・ガブリエル博士らの研究チームの「子どもの将来的な認知能力などに影響を与えるものは、幼少期に話しかけられ、話すという会話のやりとりだ」と結論付ける研究内容を解説しました。

今日は、その会話においても、母だけ、あるいは父だけという分離された状況ではなく、夫婦そろって育児し、その中での「子ども→母→父」ということばのやりとりのサイクルが大切になるのではないかという実験研究の話しを解説します。

この内容は、以下の人たちに積極的に読んで実践していただけると嬉しいです。
✅今、子育て真っ最中の夫婦!
✅これから、子育てに入ろうとしている妊娠中の夫婦!
✅恋愛中、あるいは婚活中の男女!

この研究は、2020年5月にSCIENTIFIC REPORTSに掲載された、Atigah Azhari、Gianluca Espositoらによる以下の論文です。

Physical presence of spouse enhances brain-to-brain synchrony in co-parenting couples

◇ 

一緒に住んでいる共育の配偶者(夫婦)は、お互いに物理的に近接しており、共同生活を調整するための努力において定期的に社会的相互作用に従事している。ふたり親(父親と母親)の育児は人間では一般的な出来事ですが、親の脳の反応に対する親子の配偶者の物理的な存在の影響に関する実験研究はほとんど行われてきませんでした。夫婦間の脳の同期は、2人の個人間の行動信号と生理学的信号のマッチングとして概念化されています。

この研究では、実在する親の幼児と大人の発声に関する実験に参加するときに、親子関係における配偶者の存在が相互の脳と脳の同期にどのように影響するかを調べました。

実験結果の仮説は、夫婦間の脳と脳の同調性が配偶者のパートナーの存在下(一緒に過ごすときに)でより大きくなると仮定し実験を実施しました。

機能的近赤外線分光法(※1:fNIRS)を使い、21歳以上の24組の夫婦(女性と男性)(N = 48)に対し、2つの条件で赤ちゃんと大人の女性の声を聞きながら(※2:詳しい条件は別表に示します)、前頭前皮質(PFC)の活動を測定しました。ひとつは、①同じ部屋で同じ時間に、もうひとつは②別々に異なる部屋で異なる時間に実験を実施しました。
夫婦は一緒の状態(①)でより大きな同調性を示しました。

真のカップルとランダムに組み合わされたコントロールの間でfNIRSデータを比較すると、この同期効果は真のカップルでのみ見られ、顕著な刺激に対する配偶者との同調性のユニークな効果を示す結果となりました。

この研究結果は、配偶者の物理的な存在が、社会的に関連する刺激に対する注意調節メカニズムの同期(同調性)を確立する可能性があることを示唆しています。

※1:fNIRS(脳内を流れる血液の酸素量に基づいて脳機能を計測するもの)


図.  8つのソース(灰色の点)で構成されるNIRSモンタージュと7つの検出器(黒い点)および20個のソース検出チャネル(太線)。
色インディカ脳領域:スーペリアFrontal Gyrus(SFG)、中前頭回(MFG)、下位前頭前皮質(aPFC)および前頭前野(IFG)。

※2:研究では、以下の6種類の音声をヘッドホン越しに聞かせました。

 1)大人の女性の泣き声
 2)大人の女性の笑い声
 3)赤ちゃんの高い泣き声
 4)赤ちゃんの低い泣き声
 5)赤ちゃんの笑い声
 6)静音

◇ 


図.  実験セットアップ:夫婦一緒(左)と分離(右)条件。

今回の実験では、上図のように夫婦が同じ室内に入って横に並んで音声を聞くだけでなく、別々の部屋に入って1人で音声を聞く実験も行われました。また、比較検討するために、本当の夫婦の組み合わせだけでなく、そうではない男女の組み合わせをランダムにして同じ室内で音声を聞かせる実験も行われました。実験のレベル統一のために、男女は音声を聞くことに集中するように伝えられ、実験中の会話や相手の体への接触、アイコンタクトなどは禁じられました。

実験の結果は、先述していますが、ここに詳述しますね。
夫婦が同じ部屋で横に並んで音声を聞いている場合(上図左)、別々の部屋で音声を聞いた場合(上図右)と比較して、音声に対する前頭前野の活動がより大きな類似を示しました。これは、夫婦ふたりの脳が同期していることが示しています

音声刺激の中でも、「大人の女性の笑い声」「赤ちゃんの笑い声」「静音」といった、比較的ポジティブまたはニュートラルな刺激に対し、脳の活動がより同期性を増したことが判明しています。

この現象は本当の夫婦同士の間でのみ確認され、ランダムに選出された別の組み合わせの男女が同じ部屋で音声を聞いていても、脳活動の同期性が高まることはありませんでした。

図:物理的存在の有意な効果が見られた4つのチャネルのうち、6つの刺激に対するSEP(赤)とTOG(青)の条件間でのMCC2測定の比較。

表:低音および高音の幼児の泣き声の苦痛の評価。
配偶者の身体的存在は、子育て夫婦の脳と脳で同調性を高める。

表:実験的刺激の可聴周波数。
配偶者の身体的存在は、子育て夫婦の脳と脳で同調性を高める。


◇ 
ここまで読んでみると、なんとなく「やはり夫婦って、運命共同体なんだなぁ~」って僕は思えたのですが…

あなたはどのような感覚をもちましたか?

だから、この関係性が破綻した夫婦の元にいる子どもたちへの影響がますます大きくなることが懸念され、そのような状況に陥っている子どもたちは世界中にたくさんいるのだろうと想像することは容易です。だから、どうしなさいということはここではできませんが、破綻というシチュエーションに子どもを巻き込まないと、どの夫婦にも思って生活して欲しいですね…これが希望だし、これくらいしか言えませんが…

◇ 
実験を統括しているGianluca Esposito准教授によれば、以下の通りです。

「私たちの研究は、配偶者が物理的に一緒にいる時、彼らの子育てに関する注意と認知の制御メカニズムにより大きな同期があることを示しています。両親の脳活動は配偶者の存在に形作られる可能性があるため、多くの時間を一緒に過ごさない配偶者らは、お互いの視点を理解することが困難となり、育児において協力する能力が低下するかもしれません」

長期的に見ると、子どもにとって夫婦(両親)が一緒にいないことが問題となるし、子育ての質を損なう可能性があるとしています。

また別の意味では、現状を踏まえ以下のようにも述べています。

「COVID-19との戦いにおける社会的距離を保つ対策の一環として、家族が自宅で一緒に過ごす時間が増えています。家族全員が長期間一緒にいることはストレスかもしれませんが、両親はこの時間に子どもたちの世話をしながら、お互いの行動や感情を合わせる(同調性を高める)ことができます」

◇ 
これらの結果から、子どもの世話をする際には、夫婦(両親)が一緒にいることが大切なことが導き出されました。これは、子育てにのみ言えることではなく、夫婦間の関係性が、協調性や協力体制といったことが整っていれば、相互に関わっている仕事にも好影響を与えることになるのではないかと僕は考えるに至りましたが…

あなたはどんな考えを持ちましたか?

◇ 
今日も最後まで読んでいただき、どうも有り難うございました。
これらの情報があなたにとって有益であればとても嬉しいです。
それでは、また!Ciao☆彡

【参考・引用文献】

・Atigah Azhari、Gianluca Esposito(2020):Physical presence of spouse enhances brain-to-brain synchrony in co-parenting couples
・Romeo, R. R., Leonard, J. A., Robinson, S. T., West, M. R., Mackey, A. P., Rowe, M. L., & Gabrieli, J. D. E. (2018). Beyond the 30-Million-Word-Gap: Children’s Conversational Exposure Is Associated With Language-Related Brain Function.

投稿者: コージーニ先生

リハビリテーションセラピストです。現在までに約15万人の患者、その家族及び学生と保護者とかかわりを持ってきました。その経験から患者とその家族&子どもたちと学生たちとの人生に寄り添って感じたこと、学んだことの中から「過去の僕」に知っておいてほしいコト&「未来のみんな」に伝えたいことを呟きます。 著作や詳しい活動履歴はこちら→ https://kojini'sblog.com/about

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