【脳科学】子どもの将来は「幼少時の会話」で決まる!

昨日は、豊かな(social, enriched)環境が脳の成長を促す!ということで、ローゼンツヴァイク博士ら(1996年)やゲイジ博士らの論文(1997年)を引用し、マイス(ネズミ)を使った実験をもとに、結論として、こどもたちの脳の発達や成長、病気を患った患者の脳の回復、改善には、あらゆる情報がつまった“豊かな(socoal, enriched)”環境が最適であるという話しをしました。

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いろいろな研究を調べると、親の収入の影響があったり、重要な脳の基本構造は最初の数年で構築されるとされていたり(Nelson, 2000)、図に示すような脳の発達段階を踏んでいることがわかっています。


また、世間一般の考えの中には、子どもが将来、成功するために、幼少期に大量の言葉を浴びることが大切だという考えがあります。みなさんも、そのように考えていませんか?

1995年に心理学者のベッティ・ハート博士とトッド・リスレイ博士が発表した論文では、貧困層の子どもたちの認知能力が低く、将来的な不利益を被っている原因が、幼少期に浴びる言葉の数(量)にあることが明らかにされました。

二人の研究者によると、富裕層と貧困層で育てられた子どもたちを比較したところ、4歳までに浴びた言葉の数は、富裕層の子どもに比べて貧困層の子どもは平均3000万語も少ないことが分かりました。この、幼少期に言語にさらされた体験の少なさが、就学時点での言語能力やその後の学業成績、さらには将来の経済的な成功度に影響を与えていると考えられました。


しかし、単に大量に言葉を浴びればいいというわけではなく、言葉と言葉のやりとりである「会話」こそが、重要な役割を持つとされています。今日は、その内容に沿った話しをします。

2018年2月14日にMITのジョン・ガブリエル博士らの研究チームは、「子どもの将来的な認知能力などに影響を与えるものは、幼少期に話しかけられ、話すという会話のやりとりだ」と結論付ける研究成果を発表しました。これまでの通説であった「言葉の量」よりもむしろ「言葉の質」が大切だというわけです。


論文によれば、
・子どもの初期の言語暴露は、その後の言語能力、認知能力、学業成績に影響を及ぼし、言語暴露の大きな格差は家族の社会経済的地位(SES)に関連している。

・ただし、言語経験と言語的および認知的発達との関係の根底にある神経メカニズムについての証拠はほとんどありません。

・この研究では、言語経験は、SESの多様な4歳から6歳までの36人の子供の自宅のオーディオ録音から測定されました。

・機能的MRIの結果から、物語を聞くタスク中に、SES、IQ、および大人と子供の発話だけではなく、大人との会話のやりとりが増えた子供は、左下前頭(Brocaの領域)の活性化が大きくなり、言語の露出と口頭のスキルに関する子どもたちとの関係が説明された。

・これは、子供たちの言語環境と神経言語処理を直接関連付ける最初の証拠であり、子供たちの言語スキルにおけるSESの不一致の根底にある環境メカニズムと神経メカニズムの両方を指定しています。

・結果は、会話の経験が、SES以上の神経言語処理または聞いた単語の量に影響を与えることを示唆している。

この図は、黄色の部分、具体的には左下前頭回(IFG)の活性化によって媒介される言語評価スコアに対する会話のやりとりの影響を示す媒介モデル。 活性化は、子供たちが経験する会話のやりとりの数と言語スコアの間の関係を大きく媒介した。 実線の矢印は直接パスを表し、点線の矢印は間接(媒介)パスを表します。 アスタリスクは重要なパスを示します(* p <.01、** p <.001)。


実際に、ガブリエル博士らは異なる社会経済的な背景を持つ4歳から6歳の子ども36人を対象に言語能力や認知能力に関する試験を行いました。

①まず、子どもたちは口頭での会話能力(口語能力)を評価された。
②次に、15秒間という比較的短い話を聞いているときの脳の様子がfMRIで計測された。
③最後に、家庭での大人と子どものコミュニケーションの様子をLENAと呼ばれる記録分析システムによって評価した。

ちなみに、LENAとは、言語環境分析システムで、小児が着用した特殊な衣類に処理ソフトウェアを装備した小型のデジタルオーディオ録音装置で構成され、子どもの自然音環境を最大24時間まで継続的にキャプチャ可能で、ソフトウェアは録音されたオーディオデータを自動的に処理して、子どもの泣き声を含む異なる音のカテゴリーでメタデータを生成するシステムです。

調査の結果、子どもの会話能力のスコアと最も密接に関連性があったのは、子どもが浴びる言葉の数ではなく、会話の応答数だったとのことです。

つまり、大人と子どもがそれぞれ話しかけ、話しかけられて会話をする往復回数が重要であることがわかったそうです。

ガブリエル博士によると、収入が高く、高い水準の教育を受けてきた親は、子どもたちと会話をすることが多いだけでなく、内容も多様性があったと結論しており、1時間における会話のやりとりが11回増えるごとに、口語能力が1ポイント高まる傾向にあることがわかったそうです。

話しかけ、話しかけられて会話をする、往復する言葉のやりとりである会話が脳に良い影響を与える理由については、前後のコミュニケーションが脳細胞間のつながりを生み出すのではないかという仮説を立てています。

言葉の交換では、「時間」と「意味」の2つの観点で、子どもは予測していなかったものに対応することを余儀なくされており、会話のテンポや言葉への対応を学ぶことが、脳を活性化させて言語能力が高められるということにつながっているようだと述べています。


話しかけ、話しかけられる…言葉のやりとり…という「会話」が子どもの言語能力を向上させることに大きな影響を与えるという結果から、たた単にリビングでテレビをつけておくこと、それによる実在しない他者からの「言語のシャワー」を作り出すことはそれほど意味を持たない可能性があるし、子どもの成長にはあまり良くない影響を与える…良い影響はあまり与えないのではないかと推測できますね。また、両親ともに忙しい家庭においては、晩ご飯はひとりで食事して会話を楽しむことができない環境や親が何か…ここでは、スマートフォン…に夢中で、子どもからの話しかけを無視結果となれば、子どもの成長、ひいては何になりたいか、何をしたいかなどの「将来の夢」まで潰してしまうことになりそうです。

しかし、このことに深く注意することにより、子どもとの会話を楽しむ時間を積極的に作り、子どもの成長を間近で見守ることができれば、あなたのこどもは将来の夢に向かって大きく羽ばたけるのではないかと考えることができるのではないかと思います。

研究結果を知ることは大切なことですが、それを活かすのはやはりあなた次第です。あなたの発想が豊かであれば、ネガティブな研究結果もポジティブなものに変化させることが可能です。是非、さまざまなことにトライしてみてください。発想の転換が大切ですね☆彡


今日も最後まで読んでいただき、どうも有り難うございました。
これらの情報があなたにとって有益なものであれば、ますます嬉しいです。
それでは、また!Ciao☆彡

【参考・引用文献】
Todd R. Risley, Betty Hart :Meaning Differences(1995)
・Romeo, R. R., Leonard, J. A., Robinson, S. T., West, M. R., Mackey, A. P., Rowe, M. L., & Gabrieli, J. D. E. (2018). Beyond the 30-Million-Word-Gap: Children’s Conversational Exposure Is Associated With Language-Related Brain Function.

投稿者: コージーニ先生

リハビリテーションセラピストです。現在までに約15万人の患者、その家族及び学生と保護者とかかわりを持ってきました。その経験から患者とその家族&子どもたちと学生たちとの人生に寄り添って感じたこと、学んだことの中から「過去の僕」に知っておいてほしいコト&「未来のみんな」に伝えたいことを呟きます。 著作や詳しい活動履歴はこちら→ https://kojini'sblog.com/about

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